第四章 レベルデザインNo.026
ペース配分
Pacing別名 緊張と緩和、緩急、ペーシング
概要
面の中で、敵や危険で気を張る場面と気を緩められる場面をどの順にどれだけ置くかの配分。緊張の高い場面が休みなく続けば疲れ、緩い場面や同じ種類の場面が続けばだれて飽きる。そこで、山の後に休む場所を挟み、場面の種類を変えながら山を少しずつ高くして最後を一番高くする。
使われる場面
- アクションの面の部屋の並び
- 戦闘、足場、休憩所、ボスなどの部屋をどの順に置くかを決める。戦闘の後に敵のいない部屋を挟み、ボスの手前には休憩所を置く。
- ダンジョンの探索
- 敵の多い部屋のあいだに、宝箱のある部屋や物語が進む部屋を挟む。体力を戻しながら歩き回らせ、次の戦いに備えさせる。
- 敵が波で来る戦い
- 敵の波と波のあいだに短い間を置き、弾の補充や位置の立て直しをさせる。後の波ほど敵を強くし、最後の波を一番強くする。
- 章や面の並び
- ゲーム全体で、長く重い面の次には短い面や物語の多い面を置く。面ごとの緊張の高さの最大と、遊ぶのにかかる時間を並べ、重い面が続いていないかを確かめる。
判断基準
| こういうとき | こうする |
|---|---|
| 戦闘や難しい場面が続き、休む間がなくて疲れる | 部屋ごとに緊張の高さを付けて並べ、休める部屋を挟まずに続いている区間を探す。その区間の山の後に敵のいない部屋か休憩所を挟む。 |
| 始まってからしばらく、または途中で、何も起きない時間が長くてだれる | 緩い部屋が続く区間を短くするか、間に小さな山(弱い敵が少し出る戦闘や、短い足場)を入れる。休憩所を前にまとめて置いているなら、山の後ろに動かす。 |
| 同じ種類の部屋が続き、同じことを繰り返しているように感じる | 同じ種類の部屋のあいだに別の種類の部屋を挟む。同じ種類の部屋を続けるなら、敵の組み合わせや地形を変えて、することを変える。 |
| 途中の強敵のほうがボスより手ごわく、最後が盛り上がらない | 山を少しずつ高くし、面の最後の山を一番高くする。ボスより高い途中の山は、低くするかボスの手前に動かす。 |
| 休む場所が長く、次の山が来るまで何もすることがない | 休む場所を直前の山より短くする。休む場所には回復やセーブ、物語、探索のごほうび、次の山の予告のどれかを置く。 |
| ボスに負けるたびに手前の長い道のりをやり直す | ボスの直前の休む場所に回復とセーブを置き、やられたらそこから始める。 |
遊んでこう感じたら
指示の例
戦闘の部屋が 4 つ続いて、ボスに着く前に疲れる。ペース配分を見直して、戦闘の部屋 1〜2 つごとに敵のいない部屋か休憩所を 1 つ挟んで
始まってから 4 部屋、敵がほとんど出なくてだれる。ペース配分を変えて、2 部屋目に弱い敵が 3 体くらいの小さな戦闘を入れ、最初の休憩所は最初の戦闘の後ろに動かして
途中の強敵のほうがボスより手ごわくて、最後が盛り上がらない。ペース配分として山を少しずつ高くしたいので、強敵の体力を今の 7 割くらいに下げて、ボスの一つ前の山に動かして
戦闘の部屋が続いて、同じことの繰り返しで飽きる。ペース配分を見直して、同じ種類の部屋を 2 つ続けないよう、あいだに崩れる足場を渡る部屋か宝箱のある部屋を挟んで
面の緩急がつかめない。ペース配分を確かめたいので、部屋ごとに緊張の高さを 0〜5 で付けて面の順に一覧にし、休める部屋を挟まずに続く区間を教えて
詳細
面の緊張を一本の線にする
面は部屋や区間をつなげてできている。敵の数、落ちるとやり直しになる穴のような危険、時間の制限は部屋ごとに違い、プレイヤーが気を張る度合いも違う。この度合いを部屋ごとの高さで表して面の順に並べると、面の中の緊張の上がり下がりが一本の線になる。この線を見ながら、緊張の高い場面と気を緩められる場面をどの順にどれだけ置くかを決めることをペース配分と呼ぶ。
デモの 2 つの段は同じ 10 部屋を並べていて、違うのは並べる順だけである。部屋の緊張の高さは敵の数、危険、時間の制限からこのデモで決めた 0〜5 の値である。遊んだ人を測った値ではない。
- 休憩(0):敵も危険もなく、体力の回復とセーブができる。
- 物語(1):敵はいないが、会話や出来事で話が進む。
- 探索(1):弱い敵が少しいて、宝箱を探す。
- 足場(2):敵はいないが、乗ると崩れる足場を崩れる前に渡りきる。
- 戦闘(3):敵が数体いる。
- 強敵(4):強い敵が 1 体いて、倒すまで部屋から出られない。
- ボス(5):面の最後の敵。
デモでは緊張 1 以下の部屋(休憩、物語、探索)を休める部屋として数え、線の後ろに薄い帯を敷いている。
山の後に休む場所を置く
上の段は緩い部屋を面の前半に集め、後半に緊張の高い部屋を続けて置いた並びである。足場、戦闘、戦闘、強敵の 4 部屋が休める部屋を挟まずに続く。線はそのあいだ 2 より下がらない。休めない部屋が続く区間を一つの山と数えると、上の段の山はこの 4 部屋とボスの 2 つしかない。
下の段は同じ部屋を、山の後に休める部屋が来るように並べ替えている。休めずに続くのは最長 2 部屋になる。線は山と山のあいだで 0 か 1 まで下がり、山が 4 つに分かれる。
緊張の高い部屋では、プレイヤーは敵の動きや足場から目を離せない。休める部屋を挟まずに続けると、プレイヤーは気を緩める機会がないまま次の山に入る。休む間がなくて疲れるという感想が出たら、部屋ごとに緊張の高さを付けて並べ、休める部屋を挟まずに続いている区間を探す。見つけた区間は山の後に休める部屋を入れて分ける。
休む場所に置くもの
休む場所は何もない部屋にせず、緊張を下げたまま遊ぶ理由を置く。
- 回復とセーブ:体力を戻し、やられたらここから始められるようにする。次の山の手前に置けば、山で失敗しても休む場所からやり直せる。
- 物語:会話や出来事で話を進める。次の山で戦う理由や行き先をここで示す。
- 探索のごほうび:宝箱や隠れた通路を置く。緊張は低いまま、歩き回る目的ができる。
- 次の山の予告:閉じた大きな扉や遠くに見える強敵を見せ、次に何が来るかを知らせる。
休む場所は直前の山より短くする。休む場所が長いと、次の節で扱う緩い部屋が続く区間と同じことが起きる。
緩いまま続く区間
休む場所は多いほどよいわけではない。上の段の最初の 4 部屋は物語、探索、休憩、探索と、休める部屋が続く。緊張の高い部屋を後半にまとめると、その分だけ前半に緩い部屋が集まる。下の段で緩いまま続くのは、最初の物語と探索の 2 部屋までである。
途中でだれるという感想が出たら、緩い部屋が続く区間を探す。見つけた区間は短くするか、間に小さな山(弱い敵が少し出る戦闘や、短い足場)を入れる。
山の高さの上げ方
山は少しずつ高くし、面の最後の山を一番高くする。途中の山がボスより高いと、線の一番高い所は面の途中に来る。面の最後はそれより低い山で終わる。
段の名前の右の「山の高さ」は、休めない部屋が続く区間ごとにいちばん高い緊張を並べたものである。下の段の既定の並びは 3→3→4→5 で、前の山より低い山がない。操作パネルの「山が途中で下がる」は、強敵と 1 つ目の戦闘を入れ替えて強敵を 3 番目にした並びである。山の高さは 4→3→3→5 になる。2 つ目と 3 つ目の山が最初の山より低く、面の半ばで線が下がる。
このとき、段の下の 3 つの数は既定の並びと同じ 2 部屋、2 部屋、1 部屋のままである。休む場所をどこに挟むかと山をどの順に高くするかは、別々に決まる。そのため、並びを確かめるときは続いた部屋の数だけでなく線の形も見る。
同じ種類の部屋を続けない
緊張の高さが同じでも、同じ種類の部屋が続けば、プレイヤーは同じ操作を繰り返す。上の段では戦闘の部屋が 2 つ続き、同じ種類が続いた最長は 2 部屋である。下の段は隣り合う部屋の種類がすべて違う。
休む場所の挟み方を直しても、同じ種類の並びが残ることがある。操作パネルで下の段を「上の段と同じ」にして、3 番目の休憩を 1 つ目の戦闘の後ろ(6 番目)まで動かしてみる。休めずに続いた最長は 4 部屋から 2 部屋に、緩いまま続いた最長は 4 部屋から 3 部屋に減る。一方で、休憩が抜けた所で探索が 2 つ並ぶので、同じ種類が続いた最長は 2 部屋のまま変わらない。
同じことの繰り返しで飽きるという感想が出たら、同じ種類の部屋のあいだに別の種類の部屋を挟む。同じ種類の部屋を続けるときは、敵の組み合わせや地形を変えて、することを変える。山と休む場所を交互に置いても、戦闘と休憩の組を同じ形で繰り返せば、並び全体が同じことの繰り返しになる。休む場所も、回復とセーブ、物語、探索のごほうびと、種類を変える。
長さの配分
デモはどの部屋も同じ長さとして、部屋の数で数えている。実際の面では部屋を抜けるのにかかる時間が部屋ごとに違うので、休めずに続く長さは時間で数える。戦闘の部屋が 2 つだけでも、一つひとつが長ければ、短い部屋が 4 つ続くより長く休めないことがある。面の線を描くときは、横の長さを部屋の数ではなく部屋を抜けるのにかかる時間にすると、長い山と長い谷が線の上に現れる。部屋を抜けるのにかかる時間は、実際に遊んで測る。
並びの確かめ方
AI に面を作らせたら、部屋ごとに緊張の高さを付けた一覧を面の順に出させる。一覧からデモと同じ数を数えて線を描けば、休めずに続く区間、緩いまま続く区間、山の高さの並びがわかる。デモでは並びから次のように数えている。時間で数えるときは、run に 1 ではなく部屋を抜けるのにかかる時間を足す。
// order は部屋の並び、tension(room) は部屋の緊張の高さ(0〜5)
const REST_MAX = 1; // これ以下の部屋を、休める部屋として数える
const restful = (room) => tension(room) <= REST_MAX;
// 条件を満たす部屋が続いた数の最長
function longest(order, ok) {
let best = 0;
let run = 0;
for (const room of order) {
run = ok(room) ? run + 1 : 0;
best = Math.max(best, run);
}
return best;
}
const tense = longest(order, (room) => !restful(room)); // 休めずに続いた
const calm = longest(order, restful); // 緩いまま続いた
// 山の高さ。休めない部屋が続く区間ごとに、いちばん高い緊張を取る
const peaks = [];
let top = -1;
for (const room of order) {
if (restful(room)) {
if (top >= 0) peaks.push(top);
top = -1;
} else {
top = Math.max(top, tension(room));
}
}
if (top >= 0) peaks.push(top);
ほかの用語との関係
「起承転結の面構成」は、面の中で新しい仕掛けをどの順に見せるかを決める。ペース配分は、同じ面の緊張の上がり下がりを決める。2 つは同じ部屋の並びを別の見方で決めるので、合わせて考える。たとえば、仕掛けを初めて見せる部屋を緩い部屋にし、その仕掛けを使いこなす部屋を山に置く。
「チェックポイント」は、やられたときに戻る位置である。次の山の手前の休む場所に置けば、山で失敗してもその山の手前から始め直せる。それより前に戻す作りでは、失敗するたびに越えた山と休む場所をもう一度通ることになる。
操作を教える区間(「チュートリアル」)も、教えるだけの部屋を続けず、教えた操作を試す小さな山を置く。
ゲーム全体を通して敵の強さや難しさをどう上げていくかは、「難易度曲線」で扱う。山を少しずつ高くして最後を一番高くするのは、一つの面の中の山の並べ方である。