第四章 レベルデザインNo.027
チュートリアル
Tutorial別名 操作説明、オンボーディング
概要
ゲームの操作と遊び方を、遊び始めたプレイヤーに覚えてもらうための部分。始める前に文章でまとめて説明すると、遊び始めるまで待たされる。そのうえ、読み飛ばした操作はそれが要る場面で知らないまま挑むことになる。操作は一つずつ初めて要る場所の手前で短い案内とともに示し、失敗しても損のない場所で一度使わせる。
使われる場面
- アクションゲームの最初の面
- 移動、ジャンプ、ダッシュのような基本の操作を最初の面の中の小さな場面で一つずつ使わせる。場面の手前で「A でジャンプ」のような短い案内を出し、越えたら消す。
- 新しい操作や道具を手に入れた直後
- 手に入れた直後の部屋に、それを使わないと進めない場面を一つ置く。落ちても手前に戻るだけの作りにして、危ない場所で使わせるのはその後にする。
- 操作の多いゲーム
- 格闘ゲームや乗り物の操作のようにボタンの組み合わせが多いゲームでは、遊び始めるのに要る操作だけを最初に教える。組み合わせの技はそれを使う場面が来てから一つずつ見せる。
- 試すと損をする決まり
- やられたら何を失うかや時間切れがあるかのように、試して覚えさせると損をさせる決まりは、それが関わる場面の手前で短い文章にして伝える。
- 二周目や久しぶりに遊ぶとき
- 操作を知っているプレイヤーのために、説明の画面を飛ばせるようにする。飛ばした人も後から確かめられるよう、一時停止の画面に操作の一覧を置く。
判断基準
| こういうとき | こうする |
|---|---|
| 始める前の説明が何画面も続き、なかなか遊べない | 始める前の説明は、面の目的と移動のように最初の場面までに要ることだけにする。残りの操作は初めて要る場所の手前で一つずつ示す。 |
| 説明したはずの操作を必要な場面で使ってくれない | 説明を先にまとめて出すのをやめる。その操作が初めて要る場所の手前で短い案内を出し、その操作を使わないと進めない場面を置いて一度使わせる。 |
| 新しい操作が初めて要る場所でやられる | 初めて要る場所を、失敗しても損のない作りにする(ぶつかって止まるだけ、落ちても手前に戻るだけ)。とげや敵のある場所で使わせるのは、安全な場所で一度使えた後にする。 |
| 案内が長く、読み終える前に場面に着いてしまう | 案内をボタンと操作の名前だけに縮める(「B でダッシュ」)。それでも読み終えられないなら、案内を出し始める位置を手前にずらす。 |
| できるようになった操作の案内が何度も出る | 案内はその場面を一度越えたら出さない。やられて同じ場所に戻っても、越えたことがあれば出さない。 |
| 慣れた人や二周目のプレイヤーが説明を煩わしがる | 説明の画面はボタン一つで残りを飛ばせるようにする。試させる場面は、操作を知っている人なら止まらずに通り抜けられる作りにする。 |
| 操作を忘れたときに、確かめる方法がない | 一時停止の画面にボタンと操作の一覧を置く。始める前の説明を出す作りなら、同じ説明もそこから開けるようにする。 |
| 試させる場面を通らずに先へ進めてしまう | 試させる場面を必ず通る道の上に置く。脇道に置くと、通らなかったプレイヤーは試さないまま先へ進む。 |
遊んでこう感じたら
指示の例
始める前に操作の説明が 4 画面も続いて、なかなか遊べない。チュートリアルを作り直して、始める前の説明は面の目的と移動だけにし、ジャンプやダッシュはそれが初めて要る場所の手前で「A でジャンプ」くらいの短い案内にして
ダッシュを初めて使う穴がとげの穴で、ダッシュを知らないまま落ちてやられた。チュートリアルとして、落ちても手前に戻るだけの浅い穴をとげの穴より前に一つ置いて、そこでダッシュを一度使わせて
一度越えた場面でも、やり直すたびに同じ案内が出て邪魔。チュートリアルの案内は、その場面を一度越えたらもう出さないで
二周目なのに、最初の操作説明を毎回読まされる。チュートリアルの説明の画面をボタン一つで飛ばせるようにして、代わりに一時停止の画面に操作の一覧を置いて
詳細
始める前にまとめて説明する作り
初めて遊ぶプレイヤーは、どのボタンで何ができるかを知らない。そこで、ゲームの操作と遊び方を、遊び始めたプレイヤーに覚えてもらうための部分を作る。この部分をチュートリアルと呼ぶ1。
一つの作り方は、遊び始める前に説明の画面を続けて出し、操作を全部書いておくことである。デモの上の段は、移動、ジャンプ、ダッシュ、高いジャンプの 4 画面で合わせて 145 文字の説明を出してから面を始める。デモのモデルの速さ(1 秒に 10 文字)で全部を読むと、読むだけで 14.5 秒かかる。画面を送る時間を足すと、遊び始めるまでに 15.7 秒かかる。
この作りの問題は二つある。一つは、遊び始めるまで待たされることである。もう一つは、続けて出した説明を、プレイヤーが最後まで読むとは限らないことである。読まずに送った画面の操作は、それが要る場面で知らないまま挑むことになる。
デモのモデル
説明をまとめて出す作りがうまくいくかは、プレイヤーが説明をどう読み、どう動くかで決まる。そこでデモの自動再生では、同じ規則で動くプレイヤーのモデルに上の段と下の段を遊ばせている。規則は次のとおりで、どちらの段も同じである。
- 説明の画面:1 画面ずつ、1 秒に 10 文字の速さで読み、読み終えてから 0.3 秒で次へ送る。次の画面を読むと、読んだ文字数の合計が 60 文字を超えるなら、その画面から先は読まずに 0.3 秒ずつで送る。
- 案内:場面の手前に案内が出たら、歩きながら同じ速さで読む。読み終える前に操作する位置に着いたら、読み終えるまで立ち止まる。
- 覚えている操作:読んだ説明と案内に書いてあった操作と、失敗して見つけた操作は忘れない。
- 場面での動き:場面に合う操作を知っていれば、決まった位置でその操作をして越える。知らなければ、そのまま進んで失敗する。失敗した場面に効く操作は、1 回の失敗で見つけたことにする。
これはふるまいを単純にした決まりで、人が読む速さや覚えていられる量を測ったものではない。1 回の失敗で効く操作を見つけるという規則は、上の段に有利な仮定である。続けて読む文字数は操作パネルで 10〜150 文字の範囲で変えられる。
上の段で起きること
上の段のモデルは、移動(28 文字)とジャンプ(29 文字)の 2 画面を読み、合わせて 57 文字になる。次のダッシュの画面(49 文字)を読むと 60 文字を超えるので、残りの 2 画面は読まずに送り、遊び始めるまでに 6.9 秒かかる。遊び始めると、ジャンプは知っているので床のとげは跳び越える。ダッシュは知らないので、とげの穴にそのまま進んで落ち、面の最初に戻される。高いジャンプも知らないので、とげの柱でもう一度やられ、ゴールまでに 17.1 秒かかる。
続けて読む文字数を 150 文字にすると、上の段も全部を読んで一度もやられないが、遊び始めるまでに 15.7 秒かかる。反対に 10 文字にすると、説明を一つも読まずに 1.3 秒で遊び始め、3 か所すべてでやられる。デモのモデルでは、説明をまとめて出す作りのまま読む量を増やすと待つ時間が延び、減らすとやられる回数が増える。
ゴールまでの時間だけを見ると、この短い面では全部を読んだ場合(19.4 秒)がいちばん長い。面の最初に戻されても、失う道のりが短いからである。やられたときに失う道のりは、面の長さと「チェックポイント」の置き方で変わる。長い面ほど、やられる回数が響く。
必要な所で一つずつ試させる作り
下の段は始める前の説明を出さずに、すぐ遊び始める。操作が初めて要る 3 つの場面の手前で、その場面の案内だけを出す。案内は「A でジャンプ」「B でダッシュ」「A 長押しで高く跳ぶ」の 6〜9 文字である。最初の案内は遊び始めたときから、残りは前の場面を越えた所から出し、その場面を越えたら消す。モデルは案内が出てから場面に着くまでの 0.7〜1.0 秒ほどで、歩きながら読み終える。読んだのは合わせて 21 文字で、一度も失敗せずに 3.7 秒でゴールする。
案内が出るのは、その操作が要る場面の直前である。読んだことをすぐに使うので、使うまで覚えておく時間がほとんどない(デモでは 1 秒足らず)。一度に出す案内も一つだけなので、どの操作をどの場面で使うかを案内と場面の組で示せる。
文章で伝えられること
文章で伝えられるのはどのボタンで何が起きるかと、どの場面で使うかまでである。A をどれだけ長く押せば高い壁を越えられるか(「可変ジャンプ」)、穴のどこでダッシュを押せば向こうへ届くかは、試して確かめることになる。デモのモデルは操作を知っていれば一度で成功するとしているが、実際には知っていても最初の一回で押す時機を外すことがある。
そこで、案内を読ませて終わりにせず、その操作を使わないと進めない場面を置いて一度使わせる。デモの 3 つの場面は、どれもその操作を使わなければ越えられない。最初の場面は短く押したジャンプで越えられる。穴は A を長く押したジャンプでも届かない幅にしてあり、最後の場面は短く押したジャンプでは越えられない高さにしている。
試させる場所の作り
下の段の場面は失敗しても損のない作りにしている。低い壁と高い壁は越えられなければぶつかって止まるだけである。穴は浅く、落ちても底に着いてから 0.4 秒で穴の手前に戻る。上の段の同じ場所は床のとげ、とげの穴、とげの柱である。触れるとやられて面の最初に戻る。
操作パネルで下の段の「短い案内を出す」を切ると、モデルは 3 つの場面をどれも操作を知らないまま迎える。3 回失敗するが、一度もやられずに 5.2 秒でゴールする。さらに「安全な場所で試させる」も切ると、同じ 3 回の失敗がすべてやられになり、ゴールまで 11.4 秒かかる。
案内を出している既定の設定ではモデルは失敗しないので、「安全な場所で試させる」を切っても失敗は 0 回のままである。それでも試す場所を損のない作りにしておけば、案内を見落とした人や一度でできなかった人の失敗も損にならない。とげや敵のある場所でその操作を使わせるのは、安全な場所で一度使えた後にする。新しい操作を安全な場所で見せてから危ない場所や組み合わせへ進める面の並べ方は、「起承転結の面構成」で扱う。
案内の長さと消す時機
案内が長いと、読み終える前に場面に着いてしまう。デモのモデルは読み終える前に操作する位置に着くと、立ち止まって読む。案内にはボタンと操作の名前だけを書き、詳しい説明は後で見返せる場所に置く。それでも読み終えられないなら、案内を出し始める位置を手前にずらす。
案内はその場面を越えたら出さない。一度できた操作の案内を毎回出すと、できるようになった人には画面を覆うだけになる。デモを自分で遊んでやられた場合も、越えた場面の案内はもう出ない。
試させる場面は必ず通る道の上に置く。脇道に置くと、通らなかったプレイヤーは試さないまま先へ進む。行き先の示し方は「導線」で扱う。
慣れたプレイヤーと、見返す場所
二周目のプレイヤーや似たゲームに慣れたプレイヤーは、操作を知っている。説明の画面はボタン一つで残りを飛ばせるようにする。飛ばす仕組みがなくても、試させる場面は操作を知っているプレイヤーなら止まらずに通り抜けられるように作る。
飛ばした説明や忘れた操作を後から確かめられるよう、一時停止の画面にボタンと操作の一覧を置く。始める前の説明を出す作りなら、同じ説明もそこから開けるようにする。
説明を出す時機
操作をいつ教えるかは、その操作が面のどこで初めて要るかで決める。使う場面が来てから一つずつ出すのは、メニューや機能で使う「段階的な開示」と同じ考え方である。始める前の説明は、面の目的と移動のように最初の場面までに要ることだけにする。
試して覚えさせると損をさせる決まり(やられたら何を失うか、時間切れがあるか)は、それが関わる場面の手前で短い文章にして出す。文章を出すときは、読み手が自分の速さで送れるようにする(「文字送り」)。
作り方
操作が初めて要る場面ごとに、案内を出し始める位置と越えたかどうかを持つ。越えたかどうかは、やられて戻ったときも消さない。
// scenes は、操作が初めて要る場面。x0 と x1 は場面の左端と右端、hintFrom は案内を出し始める位置
for (const scene of scenes) {
// 一度越えたら、やり直しても案内を出さない
if (player.x >= scene.x1 && player.onGround) scene.cleared = true;
scene.hintVisible = !scene.cleared && player.x + player.width >= scene.hintFrom && player.x < scene.x1;
}
// 試させる場面の浅い穴に落ちたら、体力を減らさずに穴の手前へ戻す
if (player.onGround && player.standingOn === practicePit.floor) {
player.x = practicePit.x0 - player.width - 2;
player.y = groundY - player.height;
}
脚注
-
遊び始めたプレイヤーがゲームに慣れるまでを導く作り全体をオンボーディングと呼ぶこともある。 ↩