第四章 レベルデザインNo.029
導線
Player Guidance別名 誘導、プレイヤーの誘導
概要
プレイヤーを行き先へ導くために面の中に置く手掛かり。灯りや色、道の広さ、目を引く物で、分かれ道に立ったときにどちらが先へ続く道かを画面から読み取れるようにする。弱いと迷い、強すぎると一本道に感じるので、探索させたい度合いに合わせて強さを決める。
使われる場面
- 分かれ道の多い建物やダンジョン
- 先へ続く道の側だけを明るくしたり広くしたりして、分かれ道に立った時点で進む向きがわかるようにする。
- 見通しのよい野外
- 遠くの目的地まで踏み固めた道や柵、明かりの列を続けて、目印の少ない野原で進む向きを見失わないようにする。
- わき道にごほうびを置く面
- 本道とわき道の見た目を分け、わき道の先にごほうびが見えるようにする。プレイヤーは寄り道だとわかったうえで入り、戻ってから本道の続きを見つけられる。
- 追われる場面や時間制限のある場面
- 迷っている時間を減らすため、導線を強くして進む道を一本に見せる。
- 新しい区画に入った直後
- 区画の奥に光る扉や動く物のような目を引く物を置き、最初に向かう方向を示す。
判断基準
| こういうとき | こうする |
|---|---|
| どこへ行けばいいかわからない | 分かれ道ごとに本道の側にだけ手掛かり(灯り、道の広さ、色)を置く。分かれ道に立ったときに、その手掛かりが画面に映るようにする。 |
| 同じ場所をぐるぐる回ってしまう | 本道とわき道の見た目を分け、わき道から本道に戻った所で本道の続きの手掛かりが画面に映るようにする。 |
| 灯りを並べたのに、分かれ道で迷う | 分かれ道に立ったときに、本道の次の灯りが画面に映っているかを確かめる。灯りの間隔はキャラクターから画面の端までの距離を超えないようにし、分かれ道のすぐ先の本道に一つ置く。横長の画面では、縦に進む道の間隔を詰める。 |
| 手掛かりを置いたのに、見落とされる | 同じ分かれ道に、種類の違う手掛かり(灯りと道の広さ、色と目を引く物)を重ねる。 |
| 灯りや色が道しるべなのか飾りなのかわからない | 本道の印に使う手掛かりはわき道や飾りに使わない。飾りに灯りを置くなら、色か形を本道の灯りと変える。 |
| 一本道で、探索している気がしない | 本道の手掛かりを区画の出口のような大事な分かれ道だけに減らす。わき道の入り口から見える所にごほうびや、ごほうびがありそうだと思わせる物を置く。 |
| 寄り道から戻ると、どちらへ進めばいいかわからない | わき道が本道に戻る所に立ったときに、本道の続きの手掛かりが画面に映るようにする。 |
遊んでこう感じたら
指示の例
分かれ道に来るたびに、どっちが先へ進む道かわからない。導線として本道の通路だけを今の 1.5 倍くらいの幅に広げて、壁に灯りを並べて
灯りをたどって進んでいたのに、縦の通路に入る分かれ道で次の灯りが見えなくて迷った。縦の通路では灯りの間隔を今の半分くらいに詰めて、分かれ道のすぐ先にも一つ置いて
緑の扉が先へ進む印だと思ったのに、行き止まりの部屋の扉も緑だった。導線に使う緑は本道の扉だけにして、ほかの扉は壁に近いくすんだ色にそろえて
迷わないけど一本道で、探索している気がしない。導線を弱めて、本道の灯りを区画の出口の分かれ道だけに減らし、わき道の入り口から見える所に宝箱を置いて
わき道で宝を取って戻ったら、どっちから来たのかわからなくなった。わき道が本道に戻る所に立ったときに本道の続きが見えるよう、合流する所のすぐ先の本道に灯りを一つ足して
詳細
分かれ道で行き先を示す手掛かり
見下ろしの面や建物の中を進むゲームでは、分かれ道に来るたびにプレイヤーはどちらへ進むかを選ぶ。どの道も同じに見えれば選ぶ手掛かりがなく、行き止まりに入っては戻ることになる。そこで、先へ続く道の側に明るさや色、道の広さのような手掛かりを置き、画面を見ただけで進む向きがわかるようにする。このように、プレイヤーを行き先へ導くために面の中に置く手掛かりを導線と呼ぶ1。以下では、スタートから目的地まで続く道を本道、本道から枝分かれして行き止まりや寄り道に続く道をわき道と呼ぶ。
デモの面は横 37 マス、縦 16 マスである。スタートからゴールまでの本道は 49 歩で、途中に 6 か所の分かれ道がある。画面に映るのはキャラクターから左右に 6 マス、上下に 3 マスほどである。上の段はどの道も同じ細さで描き、灯りを置かず、扉はどれも灰色にしている。下の段は本道を広く描き、本道の壁にスタートから 5 歩目を初めに 5 マスおきに灯りを置き、本道の扉だけを緑にしている。扉は 2 か所の分かれ道にあり、本道とわき道の入り口に 1 枚ずつ置いてある。
デモの自動再生で歩いているもの
同じ入力を 2 つの段に流すと、手掛かりがあってもなくてもキャラクターは同じ道を歩く。これでは、手掛かりで何がわかるようになったかが歩き方に表れない。そこで、デモの自動再生ではプレイヤーのふるまいのモデルに段ごとに歩かせている。規則はどちらの段も同じで、違うのはそれぞれの段の画面に映るものだけである。モデルは 1 マス進むごとに、次の順で進む向きを決める。
- まだ拾っていないごほうびが画面に映っていれば、取りに行く。
- ゴールを一度でも画面で見ていれば、ゴールへ向かう。
- まだ通っていない所にある手掛かり(灯りの横、広い道、緑の扉)が画面に映っていれば、いちばん近い手掛かりへ向かう。同じ近さなら、まっすぐの道を選ぶ。
- どれもなければ、分かれ道ではまだ画面に映っていない所へ通じる道を右、まっすぐ、左の順に選ぶ。画面に映って行き止まりとわかった道には入らない。
モデルは画面に映った手掛かりを見落とさない。歩数の差はこのモデルで比べた差であり、実際のプレイヤーの迷い方を測ったものではない。
スタートから 6 歩の所にある分かれ道で、2 つの段の歩き方が分かれる。デモはここで 2 秒止めて「分かれ道。どちらへ進む?」と出す。上の段の画面には、東へ続く道と南へ下りる道が同じ細さで映っている。下の段では東の道だけが広く、その壁に灯りがあり、道の先の分かれ道の扉が緑になっている。
上の段は右の南の道へ入り、行き止まりが画面に映ったところで引き返す。11 歩目と 35 歩目の分かれ道でも同じようにわき道に入り、ゴールまで 83 歩かかる。そのうち 17 歩は一度通った所をまた通っている。残りの分かれ道では右の道がたまたま本道だったか、わき道の奥までがすでに画面に映っていた。下の段はどの分かれ道でも本道を選び、最短の 49 歩で着く。
導線に使う手掛かり
導線に使える手掛かりには次のものがある。
- 光と色:暗い面の中で本道の側を明るくする。色は本道の扉や登れる壁の縁のように、進む先の物だけに付ける。
- 道の形と広さ:本道を広く、わき道を細くする。道の太さは分かれ道そのものに表れるので、分かれ道に立てば必ず画面に映る。
- 目を引く物:本道の先に形や大きさが周りと違う物(大きな扉、像、開けた場所)を置き、そこへ向かわせる。
- 動く物:止まった物ばかりの画面で、本道の先に動く物(揺れる旗、飛んでいく鳥)を置いて目を向けさせる。
- 拾える物:道に沿って点々と置き、拾いながら進ませる。この置き方を「ブレッドクラム」と呼ぶ。
- ほかのキャラクターの動き:仲間が本道の先へ歩いていく、敵が本道の奥から出てくるなど、キャラクターが動く向きで行き先を示す。
- 音:本道の先から音(水の流れる音、音楽)を鳴らし、聞こえる向きで行き先を示す。
デモで入れたり切ったりできるのは灯り、本道の広さ、扉の色の三つである。
分かれ道から見える手掛かり
手掛かりは分かれ道に立ったときに画面に映っていなければ、道を選ぶ助けにならない。デモで手掛かりを一種類ずつにすると、この違いが歩数に表れる。
- 灯りだけ:71 歩。画面に映るのは上下に 3 マスまでなので、本道が縦に続く 11 歩目と 35 歩目の分かれ道では本道の次の灯りが画面の外にある。モデルは決まった規則で進み、わき道に入る。30 歩目の分かれ道でも次の灯りは映らないが、右の道が本道なので、規則どおりに本道を選ぶ。
- 扉の色だけ:59 歩。緑の扉は 11 歩目と 35 歩目の分かれ道にしかない。6 歩目の分かれ道からは 11 歩目の緑の扉が映るので迷わないが、23 歩目の分かれ道では手掛かりがなく、わき道に入る。
- 本道の広さだけ:49 歩。道の太さは分かれ道そのものに表れるので、どの分かれ道でも画面に映る。
- 灯りと扉の色:49 歩。灯りの映らない 11 歩目と 35 歩目の分かれ道には緑の扉があり、扉のない 23 歩目の分かれ道には灯りが映っている。
灯りのように間をあけて並べる手掛かりは、キャラクターから画面の端までの距離を超えない間隔で置く。横長の画面では、縦に進む道でこの距離が短くなる。デモの画面なら横に進む道では 6 マス、縦に進む道では 3 マスまでである。5 マスおきの灯りは縦の道で届かない。分かれ道のすぐ先の本道に一つ置けば、間隔によらずその分かれ道からは灯りが映る。
モデルは画面に映った手掛かりを見落とさないが、実際のプレイヤーは見落とすことがある。同じ分かれ道に種類の違う手掛かりを重ねておけば、一つを見落としても、ほかの手掛かりで本道がわかる。デモの既定では三つをすべて入れてあり、どれか一つを切っても 49 歩のままである。
手掛かりの意味のそろえ方
手掛かりが本道の印として働くのは、その手掛かりが本道にだけあるからである。わき道にも同じ手掛かりを置くと、どちらが本道かを見分けられなくなる。
デモで「本道を広く」を切り、灯りを「わき道にも」にすると、わき道の入り口の近くにも灯りが付く。モデルは近い方の灯りへ向かうので、6 歩目、23 歩目、35 歩目の分かれ道でわき道の灯りへ寄り道する。灯りと扉の色だけのときの 49 歩が 65 歩に増える。「本道を広く」を入れていれば、49 歩のままである。どの分かれ道でも、すぐ先の広い道より近い所にわき道の灯りはないからである。
本道の印に使った手掛かりはわき道や飾りに使わない。わき道や部屋を照らしたいときは、本道の灯りと色や形を変えて、別の物に見えるようにする。色も同じで、デモでは緑を本道の扉とゴールにだけ使い、ほかの扉は灰色にしている。一つの面の中だけでなくゲーム全体で同じ手掛かりに同じ意味を持たせると、面が変わっても覚えた読み方をそのまま使える。
本道とわき道の見分け方
わき道はごほうびを置いて寄り道させる場所にもなる。デモの「わき道にごほうび」を入れると、ひし形のごほうびを 2 つ置く。1 つ目は 30 歩目の分かれ道から東へ延びる短いわき道の先にあり、本道から見える。2 つ目は 6 歩目の分かれ道から南へ下りるわき道の奥にあり、本道からは見えない。段の右上のひし形は拾ったごほうびを示す。
下の段は 1 つ目が画面に映ったところで寄り道して拾い、55 歩でゴールに着く。2 つ目はわき道の奥にあって画面に映らないので、拾わずに通り過ぎる。上の段は 6 歩目の分かれ道でわき道に入ったときに 2 つ目を見つけ、1 つ目も拾うが、ゴールまで 143 歩かかる。
導線に従って進むプレイヤーは、本道から見えないわき道には入る理由がない。寄り道させたいごほうびは、ごほうびそのものか、ごほうびがありそうだと思わせる物(光る物、開けた場所)がわき道の入り口から見える所に置く。わき道は本道より細く暗くしておき、入る前から寄り道だとわかるようにする。
寄り道の後は本道へ戻る。戻った所から本道の続きが見えなければ、プレイヤーはどちらへ進めばよいかわからない。ごほうびを置いたまま「本道を広く」を切ると、下の段は 151 歩かかる。1 つ目のごほうびを拾って 30 歩目の分かれ道まで戻ったとき、次の灯りも緑の扉も画面の外にあるので、モデルは決まった規則で来た道を西へ戻ってしまう。わき道が本道に戻る所には、そこに立ったときの画面に映るように、本道の続きを示す手掛かりを置く。
導線の強さと探索
導線を強くするほど、分かれ道で迷う回数は減る。その代わり、わき道に入る理由もなくなる。デモの下の段はごほうびが見えないかぎり、どのわき道にも入らない。プレイヤーがこのように進むと、面がどれほど広くても、通るのは一本の道だけになる。
導線の強さはそのゲームで探索をどれだけ遊ばせたいかで決める。追われる場面、時間制限のある場面、物語を見せる場面では、すべての分かれ道に手掛かりを置いて種類も重ね、迷う時間を減らす。探索を遊ばせたいゲームでは、本道の手掛かりを区画の出口のような大事な分かれ道だけに置き、残りの分かれ道はプレイヤーに選ばせる。わき道の入り口にはごほうびがありそうだと思わせる物を見せる。導線を弱めるときも、手掛かりの意味は変えない(本道の印をわき道に置かない)。
ランドマークやミニマップとの違い
導線は分かれ道の近くに置いて、その場で次の道を選ばせる手掛かりである。「ランドマーク」は塔や山のように遠くから見える目印で、今いる位置と目的地の大まかな方向を示す。遠くのランドマークで向かう方向を決め、近くの分かれ道では導線で道を選ばせる、のように組み合わせる。
「ミニマップ」は画面の隅に地図を出し、面の外の表示で行き先を示す。導線は面そのものの見た目で示すので、プレイヤーは画面の中ほどの景色を見たまま進める。「ゲーティング」は鍵を取るまで扉を開けないようにして、通れる道そのものを限る。導線はどの道も通れるまま、見た目で本道を選ばせる。
面に置いた物のどれを目立たせるかは、画面の表示と同じく「情報の優先度」で決める。本道の手掛かりは飾りの物より目立つようにする。
導線の確かめ方
面を作ったら、本道の分かれ道ごとに、そこに立ったときの画面に本道の手掛かりが映るかを確かめる。デモの灯りのように手掛かりを一定の間隔で並べると、道の向きによって手掛かりが画面に入らない分かれ道が出る。面のデータからは次のように調べられる。
// 本道の分かれ道ごとに、その先の本道にある手掛かりが、分かれ道に立ったときの画面に映るかを確かめる
// mainPath はスタートからゴールまでのマスの並び、hasCue(p) はそのマスに本道の手掛かりがあるか
// halfW と halfH は、キャラクターから画面の左右の端と上下の端までのマス数
mainPath.forEach((p, i) => {
if (floorNeighbors(p) < 3) return; // 床が 3 方向以上に続くマス(分かれ道)だけを調べる
const seen = mainPath
.slice(i + 1)
.some((q) => hasCue(q) && Math.abs(q.x - p.x) <= halfW && Math.abs(q.y - p.y) <= halfH);
if (!seen) console.warn(`分かれ道 (${p.x}, ${p.y}) から、本道の手掛かりが見えない`);
});
デモの灯りをこの方法で調べると、11 歩目、30 歩目、35 歩目の分かれ道が見つかる。
画面に映っていても、プレイヤーが手掛かりに気づくとはかぎらない。面を知らない人に遊んでもらい、分かれ道でどちらへ進んだかを記録して、わき道に入った分かれ道の手掛かりを見直す。
脚注
-
「動線」と書くこともあるが、動線は人や物が実際に動く道筋を指す語である。行き先へ導く手掛かりを指すときは「導線」と書く。 ↩